母の葬儀を終えシンガポールに戻った私を待ち構えるかのように、入れ違いでライアンは出張に行ってしまいました。
と、このように書くと随分と冷たい人のように聞こえるかもしれませんね。実際のところはどうなのか、それはまあ脇に置いておくとして(笑)、ライアン自身には、シンガポールに来た当初からずっと手掛けて来たプロジェクトがようやっと一区切りついて、ついに日の目を見ることになった、晴れがましいイベントの日が迫っていたのです。
近くでずっと見ていた私は、気持ちよく送り出すほかありません。
と言いつつも、まぁ実際のところ、私はひとりで過ごせて助かりました。
自分の気持ちを立て直すだけで精一杯で、必要最低限の家事しか出来ませんでした。そんな時に家事に勤しんだり、周りでアレコレ言われたら、自分のペースを保てなかったかもしれません。
どういうことかと言いますと。。。
暦の関係で母の葬儀は亡くなって数日経ってから行われたため、その間は母と一緒に過ごせました。その後母がお骨になってしまうと、私は妙に現実味がなくなってしまい、不思議なことに悲しさやさみしさが急にどこかに行ってしまいました。
実際に最期の看取りをした弟は、葬儀が終わると気が抜けてしまってかなり精神的に参っている一方で、後から思い返すと私は、何も感じられなくなっていたようでした。弟が落ち込めば落ち込むほど、私は空元気。
そんな状態でシンガポールに戻ったのでした。
ライアンが出張でしばらく家を空けている間、悲しさやさみしさに明け暮れるようなこともなく、妙に元気な私。だからこそ何かしようとするにはするのですが、どうにも集中力が続きません。本を読むかDVDをずっと眺めているだけ。おかしいなぁ、なぜこんなに何もできないのだろう? 私の時間はあと25年しかないのに(→記事)、どうしよう!と焦るばかり。そうして焦るものの、やっぱり何も手に付きません。
そこで、ふと思いました。回らない頭で思いつきました。
……何も手につかないなんて、考えてみれば当たり前だ! 母を亡くしたばかりなんだもの!
そんな当たり前のことにも気付かないくらい、実際の私は参っていたようでした。
それからようやく、悲しさやさみしさ、恐怖に向き合えるようになってきました。
いろんな母娘の関係があるとは思いますが、私は母と仲が良かったんです。ふたりでランチに行けば、ずっとお互いにしゃべり倒し、日本にいた頃は長電話で2時間なんてザラ。シンガポール来てからも国際電話で1時間も当然(母のはガラケーだったので有料の国際電話です、冷汗)。親友のような肉親、そして絶対的な味方というのが母という存在でした。
ですので親友と母親を一度に亡くしてしまったような気持ちです。
それに、私には子どももいなければ甥や姪もいません。肉親を亡(失)くす、もっと言うと、肉親が減ってしまったことへの、本能的な恐怖のようなものを感じずにはいられません。遺伝子を残すことの出来ない恐怖とでもいうのかしら?これに似ているのかもしれません。これぞ本能ですよね。
また、同時にこの恐怖には避けて通れない問題も含みます。孤独死などの現実的な問題のアレコレです。ですから今後は、生き方も考え直す必要があるということ。今まで気付かないふりをして来ましたが、そうも言っていられなくなりました。あーぁ、もうそんなお年頃なんですね。
私は昨年の4月に癌治療を終了(→記事)してからずっと、自分らしく生きることについて考え続けて来ました。治療していた14年間は決して無駄ではないと思うけれど、自分の人生を生きていたわけではなかったと気付いてしまってからというもの、その時間を取り返したいと願い、せめてこれからは自分の人生に遠慮しないと、そればかり思い続けていました。
以前に癌の手術を受けたことのある友人は手術の日を第2の誕生日だと、なぜなら生まれ変わったのだからと言っておりました。だとすると、私の第2の誕生日は4月17日でした。
その初めて迎える第2の誕生日が、奇しくも母の通夜の日となったのは、どんな偶然でしょうか。
母は母の人生を全うしました。私は私らしく、自分の人生を楽しみたい。ただそれだけです。母の死は、時間が有限であることを身をもって教えてくれているかのようです。
と、そんなこんなを、ライアンが出張に行っている間、グルグル考えておりました。そうしていろんな感情と向かい合うことで少しずつ気持ちを立て直していったのです。(もちろん、それは今でも続いています。)
ですが、どうやらハタから見ると情緒不安定な私は相当マズそうに見えたらしく、帰宅したライアンは、泣いたり笑ったり落ち込んだり考え込んだりと忙しい私を持て余し「気分転換しよう、休みが必要だ」と言い出しました。
平静でいた時の方がワタシ的には問題だったのですが、うーん、わかっていませんねぇ。。。
ということで、突如ステイケーションすることになりました。
ライアンはわかっていないようだけど、楽しそうだから、まぁいっか! 私の生活はこれからも続くのだから、とりあえず雫と一緒に気分転換しましょうかねぇ。
みんなでお泊まりしました
つづきます
今日も最後までお付き合い頂きありがとうございます。
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